No.9:提灯屋(永尾邸)(ちょうちんや(ながおてい))
伊賀市上野魚町の町名は、海辺とは程遠い山地にありながら魚の取り扱いを生業とする見世(店)が多く近隣には「魚市場」もあったことによります。魚町の西端部に「提灯屋」があり現在は、「永尾珈琲豆挽売店」となっています。
現当主永尾幸憲氏の話によれば、永尾家中興二代の祖である文四郎が「煮うり屋」として天保4年(1833)創業し、高標をなつめ形提灯に「安めし提灯屋」と書き赤色に塗って表の入り口に吊るしていた。三代目弥吉は、商いに熱心で名を広め遠く西は岡山、東は静岡辺りまで「安めし提灯屋」の名が伝わったという。
現在の建物は、昭和3年に建築されました。その当時総二階で広い間口の建物は堂々として画期的であったそうです。この建物の最大の特徴は、二階の窓下に規則正しい正方形の格子を設け、さらに庇屋根(ひさしやね)の熨斗瓦(のしがわら)が海の波を形どった模様に、なおかつ屋号の「提灯屋」という文字を浮かび上がらせていることにあります。
昭和56年まで豆腐田楽を炭火で焼いて飲食店を営んでいましたが、現在は「永尾珈琲豆挽売店」としてコーヒー豆の販売を行っています。田楽とコーヒー、どちらも香ばしい香りで家風と暖簾が伝承されているようです。
参考資料
読売新聞 :街並み 伊賀を行く 永尾邸 平成9年2月7日付
永尾家由来 :中興六代 永尾幸憲